鈴木研究室

非線形ダイナミクスとその応用

非線形なルールに従って時間発展するシステムの挙動(非線形ダイナミクス)を研究しています。単純な写像や微分方程式で記述されたシステムから、想像もつかないほど豊かな振る舞いが現れてくることが、非線形ダイナミクスの大きな魅力です。特に、大規模な力学系や不連続性を持つ力学系に現れる非線形ダイナミクスを研究しています。また、脳・神経系などの生体システムや、電力システムなどの工学システムなど、世の中には非線形システムとしてモデル化される現象があふれています。様々な分野における現象を対象として、非線形ダイナミクスの観点からモデル化・解析することで、現象理解や問題解決に貢献するとともに、そこに潜む未知の非線形ダイナミクスを探究しています。

キーワード

非線形ダイナミクス、力学系、複雑系、カオス、フラクタル、複雑ネットワーク、ハイブリッドシステム、多体ダイナミクス、分岐、相転移、繰り込み、マルコフ連鎖モンテカルロ法、サンプリング、複雑系コンピューティング、非線形時系列解析、数理モデリング、神経回路網(ニューラルネットワーク)、脳・神経データ解析、電力システム、再生可能エネルギー、交通流、感染症

教授 鈴木秀幸

非線形力学系の次元縮約とその応用

自然界にみられる動的なふるまいの多くは大自由度かつ非線形性を伴い、その解析は容易ではありません。しかしながら、ニューロンやタンパク質といった機能的な素子、さらにはその集団のふるまいの背後に、低次元の骨組みが潜んでいることもよく観察されます。この特性を利用し、支配的な低次元ダイナミクスを抽出することで、神経回路網といった複雑な大規模システムの解析を非常に簡素化することができます。これは自然現象の解析のみならず、電力システムといった大規模な工学的システムの解析・設計にも役立てられています。
このような背景のもと、高次元の非線形時間発展システムから、低次元の支配的な骨組みを抽出するための系統立った枠組み(次元縮約法)の開発、およびその応用研究を行っています。例えば、従来手法では扱うことのできなかったハイブリッド力学系といった新しいクラスの非線形ダイナミクスに対して次元縮約法を拡張し、そのリズム同期現象といった協同現象の解析に取り組んでいます。また、次元縮約法を用いた協同的なふるまいの安定性最適化といった、非線形システムのデザインに関わる課題にも取り組んでいます。さらに、作用素論的力学系解析手法を介した、次元縮約法とデータ駆動型科学との結びつきにも着目しています。作用素論的手法に基づく次元縮約法について、その理論的側面の発展、およびデータ解析アルゴリズムの開発に取り組んでいます。この取り組みは、複雑な実システムの支配的な低次元構造をデータのみから効果的に抽出し、その解析に役立てることにつながると期待されます。

キーワード

非線形力学系、階層的時間スケールを持つ力学系、最適化と制御理論、ダイナミクスの次元縮約理論、同期現象、数理生物学(神経系、循環器系、身体運動システム)

准教授 白坂将

非線形現象を用いた探索・サンプリングアルゴリズム

大規模な非線形力学系に見られるような複雑性を情報処理や問題解決に活かすための方法について研究しています。特定の処理に特化したGPUのようなデバイスや現在開発が進む量子コンピュータなど、現代の計算・情報処理のかたちは多様化が進んでいます。また、脳神経の活動や細胞内の情報伝達など、情報処理と呼ぶべき現象は人工の計算デバイスだけに見られるものではありません。このように計算・情報処理は様々なかたちで実現されているのですが、これらはみな非線形で動的な現象に支えられていると言えます。計算・情報処理のための非線形力学系を数理モデルを通して考えることで、新しい計算のデバイスの設計の指針となるような、あるいは効率的な数値シミュレーションを通じてそれ自身が有用なアルゴリズムとなるようなダイナミクスのモデルが得られるのではないかと考えています。
具体的な研究としては、充足可能性問題やイジング問題などの最適化問題や、複雑な確率分布に関する数値積分などについて、探索・サンプリングアルゴリズムの開発や性能の解析、およびそのための数値計算法の研究を行っています。これらは工学上の問題の数理的表現として頻繁に現れる一方、単純で規則的な列挙・探索が非効率になってしまう問題としても知られています。このため、複雑性を加えるための確率的ノイズを用いた手法が現在広く用いられているのですが、このような問題について非線形力学系が示す複雑な挙動を効率的に用いることが可能なのではないかと考えています。

キーワード

ソフトコンピューティング、Analog computing、充足可能性問題、イジング問題、ボルツマンマシン、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)、焼きなまし法、数値積分、Herding、準モンテカルロ法、確率モデリング

助教 山下洋史

卒論・修論タイトル

2023年度
  • カオス時系列予測と適応的観測計画を統合する機械学習手法の構築
  • Physics Informed Neural Networks による 2 次元断面データからの 3 次元内部データ推定
  • マルチスケール時系列予測に適したリザバーコンピュータ構造の探索
  • Multilayer Graph Echo State Network の開発と応用
  • 外部制御を用いた確率最適制御への確率的リセットの導入
  • カラードノイズを印加したネットワーク系における早期警戒信号
2022年度
  • セルオートマトンを用いたリザバーコンピューティングの性能解析
  • 電力網の強摂動に対して脆弱な局所的トポロジーの特定
  • Reward-modulated Hebbian learning を用いたリザバーコンピューティングによるマルチモーダル情報処理
  • アトラクタ再構成のためのリザバーコンピューティングの hyperparameter tuning
  • ハイブリッドリザバーコンピューティングによるパラメータの推定
  • モーメンタムアニーリングにおけるパラメータ設定の提案
  • リザバーコンピューティングを用いた強化学習における性能の学習率と割引率に対する依存性
2021年度
  • R-STDP則を用いたSNNの学習則の特性に関する研究
  • 蛍光振幅変調度の非線形周波数依存性を用いたELM情報処理に関する研究
  • 実応用を志向したデータアシストリザバーコンピューティングの研究
  • リザバーコンピューティングによる確率カオスの予測および力学的特性の再現
  • ワクチン接種を考慮した時間遅れを含む感染症数理モデルの振る舞い解析
  • 時間遅れを有するSznajdモデルの振舞い
  • リザバーコンピューティングを用いたマルチエージェント環境の決定論的方策勾配法