単純な放電モデルに、なぜ複雑な模様が現れるのか

H. Suzuki, K. Aihara, and T. Okamoto, “Complex behaviour of a simple partial-discharge model,” Europhysics Letters 66, 28–34 (2004).

絶縁体の中に小さな空隙があると、高い電圧をかけた際に、その内部だけで放電が起きることがあります。これが部分放電です。繰り返される放電は絶縁体の劣化に関わるため、いつ、どれくらい起こるかを理解することが重要です。この論文が調べるのは、三つのコンデンサーを用いた基本的な等価回路モデルです。交流電圧のもとで、正の放電と負の放電の両方が起こります。交流の1周期のどの位置で放電が起きたかを、多数の周期にわたって集計した分布は、絶縁状態を調べる手がかりになります。放電が始まる電圧などのパラメータを固定し、ランダムな揺らぎを取り除いても、印加電圧と放電回数の関係は単純になるのでしょうか。複雑な観測結果を解釈する前に、最も簡単なモデル自体に、どのような複雑さが含まれているのかを問います。

この研究は、固定パラメータの決定論的なモデルでも、交流電圧の1周期あたりの平均正放電回数が、印加電圧の振幅に対して「悪魔の階段」に似た複雑な変化を示すことを明らかにしました。解析の鍵は、放電の繰り返しを、区間ごとに移動量が変わる「二重回転写像」へ帰着させることです。パラメータ空間の自己相似的な構造から、放電回数の変化や放電が起こる位相の複雑な分布を説明します。予備的な実験との比較でも、モデルの特徴に対応する傾向が見られました。

正の放電が2回、負の放電が1回起こる電圧波形と、多数の周期の放電回数を位相角ごとに集計した複雑な分布。