Hideyuki Suzuki, Jun-ichi Imura, Yoshihiko Horio, and Kazuyuki Aihara, “Chaotic Boltzmann machines,” Scientific Reports 3, 1610 (2013).
ボルツマンマシンは、互いに影響し合う多数の「0か1」の素子を使う計算モデルです。通常は乱数を使って状態を更新し、さまざまな候補を探索します。では、その乱数を取り除いても、同じような計算はできるのでしょうか。この論文では、各素子に0と1の間を往復する連続的な内部状態を持たせ、端に達したときに出力を切り替えます。周囲の素子に応じて移動速度が変わるため、全体として複雑な動きが生まれます。重要なのは、毎回の軌道を一致させることではなく、多くの状態を訪れた結果の統計が、目的の確率モデルと対応するかという問いです。
学術的な貢献は、確率的な更新を、連続的な運動と離散的な切り替えからなる決定論的力学系で置き換える構成を示し、その計算能力を数値的に検証した点にあります。最大カット問題と二次元イジング模型を用いた比較では、通常のボルツマンマシンに近い解や統計量が得られました。ただし、相互作用する系全体が厳密にギブス分布を再現することを、この論文が証明したわけではありません。また、通常の計算機での速度向上も主張していません。乱数生成を必要とせず、各素子が並列に動くという構成が、将来のハードウェア実装に向けた可能性を示しています。